宗廟構造
 宗廟は朝鮮王朝の歴代帝王と后の神主を奉安し祭祀を挙げる王家の祠堂で、王朝の国土と五穀を司る神を祀り国体民安を祈願する社稷壇と共に国家の象徴として王が親しく先王に対する祭祀を奉る所である。 このように国家の象徴的建物として知られた宗廟は1995年にユネスコが選定した世界文化遺産に登録される喜びを味わった。

 宗廟の位置や建物の方角を見ると古代中国の礼制に従っているけれど、実際の建物配置や周辺の与件を省みると、わが国の現実に合わせて適切に適用していることが発見される。端正な四角に積み上げられている正殿の塀は瓦の屋根で覆られて、人の背を遥かに越える高さで正殿を特に厳粛な雰囲気に包んでいる。正殿には三つの門があり、其の内南門は神霊が出入りするところで祭官や参観人は使用できない。東門は獻官である王や祭官達が出入りする所、西門は楽士や佾舞員が使用する門で、門毎に用途と規模が違う。

 南門を入ると中央に路が有るが、これは神路と云って神の通う路で今も一般人の使用は禁じられている。又東側の下月臺から上月臺に至る階段の間には神室に通じる路があるが、これは御路で初獻官の王が使用する路である。上月臺に三つの階段があり、東のは獻官が通る階段で、中央のは神路と通じている。

 正殿各神室の構造は至極単純である。此の単純性が却って圧倒的な荘厳美を演出し、ほかの建築物では見られない宗廟だけの建築特性を見せている。宗廟正殿の各神室は一枚板で出来ていて、それが建築構成の基本単位となり、ここには宗廟制度の中で一番重要な神位が奉ってある。神主(位牌)は栗の木で作られ、横13.5cm, 縦27.9cmの大きさで神室の西側には王の神主、東側には王妃の神主ある。   

 荘厳美を演出している正殿ではあるが、各構造物は装飾なしに単純な形態である。正殿の末端部分をみると屋根が一段と低く成っているがこれは正殿と両脇の付属室を区別したので、付属室の横には東月廊, 西月廊の二つの建物があたかも正殿左右から保護する様な形に建っている。

 正殿の東南側にある齋宮はかつて国王が祭祀の準備をしたところで、齋宮東側には祭官達がたむろした部屋があり、西側には王と祭官達が沐浴をした浴廳がある。正殿の東門に隣りする小さな建物は祭祀に関する仕事に従事した官員達が留った守僕房である。典祀廳は宗廟大祭のとき祭物、祭器など隠す祭祀用品を準備したところ。典祀廳近くには祭井と云う井戸があり、祭祀用の全ての水を供給した。近くにある池は1443年(世宗25年)造られたもので、四角い池の真ん中に円い島があるが、これは天円地方の理論に従って造られたのである。

 宝物第821号の永寧殿には中央に太祖4代の先王が祀られ、左右の付属室には第5室から第16室まで神室がある。永寧殿の全体的構成は正殿と大差無いが規模は少し小さい。このように建物自体は小さいが、建築空間の荘厳さと空間構成は正殿と変り無くこれを建築した匠達の優れた技を偲ぶことが出来る。